我が国の犯罪被害者は、生命身体等に重大な侵害を受けた事件の重要な当事者でありながら、長い間刑事司法制度からも社会からも「忘れられた存在」であった。多くの犯罪被害者は、我が国の犯罪被害者支援の充実を願いながらも、声をあげることさえ出来ず、苦しんできた。 犯罪は社会の規範に反し、人間の基本的な権利を侵害するものであり、また誰もが犯罪被害者となりうる。それゆえに、犯罪被害者を理解と配慮をもって支援し、その回復を助けることは、本来、社会の当然の責務である。 犯罪被害者が大きな打撃から立ち直り、人間としての幸福を求めて再び歩み始められるように、犯罪被害者の権利を確立することは、単に福祉の増進にとって必要であるばかりでなく、国民の刑事司法に対する信頼を高め、社会全体の利益につながるものである。 国、地方公共団体は、被害者支援のための総合的な施策を講ずる責務を担うべきである。また、国民は、犯罪被害者のおかれている状況を理解し、支援に協力することが求められる。 全国被害者支援ネットワークは、このような認識に立ち、ここに以下の犯罪被害者の権利を宣言する。
全国被害者支援ネットワークは、平成10年5 月に設立され、加盟団体(48被害者支援センター)とともに犯罪被害者等への支援充実のための諸活動を展開してきました。 平成16年12月に犯罪被害者等基本法が制定され、政府は平成17年12月に同法に基づき犯罪被害者等基本計画(第1 次犯罪被害者等基本計画)を策定しました。平成23年3 月第2 次犯罪被害者等基本計画が制定されたことで犯罪被害者等への支援施策は大きく進展しました。
犯罪被害者やその遺族を対象として、物質的援助や相談・情報提供、刑事手続における権利擁護などと合わせて、危機介入モデルによる精神援助が提供されるようになったのは、欧米先進国ではおおむね1970年代からであり、その活動の多くを担ってきたのは、現在も活発に活動を続けているさまざまな非営利民間援助団体である。当事者を含む草の根運動から始まったそれらの団体は、活動を発展させる中で、組織的に訓練育成されたボランティア・スタッフが精神援助を提供してきた。
NNVS認定コーディネーターの皆様が、今や八面六臂の活躍を見せ、ネットワークではもとより、各ブロック、各支援センターにおける人材育成活動にとって、なくてはならない存在であることは誰しも認めるところである。 本稿では、NNVS認定コーディネーター制度が誕生した経緯とその後における人材育成分野と、広域・緊急支援活動におけるNNVS認定コーディネーターの位置づけ及びその変遷を歴史の一コマとして記録に留めておくこととしたい。
犯罪被害者支援に関する法制度やそれに基づく諸施策は、近年、著しく充実し、法令改正の頻度も高く、改正の都度、少しずつ改善が進んでいる。 昭和、そして、平成の初期のころを思えば、その充実ぶりには目を見張るものがある。 しかし、犯罪被害者の多岐にわたるニーズを理解し、そのニーズを満たすための法制度やそれに基づく諸施策は、まだ完成したとまではいえない。 そこで、私たちは、これまで犯罪被害者支援の充実に力を注いできた諸先輩の熱意と不断の努力の軌跡を振り返り、その熱意を受け継ぐにとどまらず、さらなる改善を遂げて、次世代に引き継がなければならない。