性犯罪被害者は女性であると、つい思い込んでしまう。今も多くの方々には、そのような傾向があるのではないかと思います。最近マスコミ等でも報道されました、とある芸能プロダクションの事件で、男性に対する性加害問題が、かなり多くの方に認識されるようになりました。それでも男性の性被害についての認識が幅広く世の中に知れ渡ったとまでは、いえないのではないかと思います。男性の性被害者も女性の性被害者同様、長期的支援が必要になる重篤な被害を受けられる方も決して少なくありません。
本日の内容ですが、被害者支援センターの皆様にアンケート、ご協力いただきましたので、アンケートの回答についてご紹介してから、性暴力がどうして「暴力」なのかですとか、その発生のプロセスや、相談することを困難にしている社会的背景、そして、ひとりひとり、どういったことができるだろうということについて、お話しさせていただければと思います。
性犯罪の被害者は女性と思われがちですが、昨年大きく報道された芸能事務所の性虐待事件で、多くの若い男性たちが性被害を受けていたことが明るみに出ました。男性は心身に傷を負い、悩みを深めても相談をためらう傾向があるといいます。パネルディスカッションでは、男性被害の実態を踏まえて、男性が声を上げやすくする手立てや、これまで経験の少なかった支援のこれからを考えました。
「性暴力はなぜ『暴力』なのか」について話していきます。私は心理職として心理の境界線という概念で考えます。境界線は、自分が安心と感じる領域を守る線です。例えば「シャープペンシルを貸して」と言って、「いいよ」と言われて借りるのが普通です。貸すか貸さないかは持ち主が決めていい。性にも境界線があって、いつ、誰と、どんな性的行為をするか、自分で決めていいはず。自分の意志や感情がないがしろにされると、安心や安全が脅かされるということです。子どもの頃から性の境界線が侵害されていると感じています。スカートめくりやズボンおろしを多くの人が覚えています。それで傷ついても、「気にしないで」「いたずらだよ」と言われる。そうなると自分の体は大事にされていない、体の決定権は自分にはないと感じ、自分の性的な境界線を決めるのが難しくなっていく。そういう社会ではないかと。
昨年、第4次犯罪被害者等基本計画がスタートいたしました。性犯罪など、被害が潜在化しやすい被害者への支援が必要という認識の下、ワンストップ支援センターですとか、警察庁の「#8103(ハートさん)」など公的な相談窓口が充実し、性犯罪・性暴力被害者のための様々な施策が展開されています。しかし、性別にかかわらず、そして、子どもから大人まで「誰にも相談しなかった」「相談できなかった」という声を聞くことは多くあります。