令和4 年(2022 年)6月、刑法等一部改正法(刑事収容施設法、少年法、更生保護法等の改正が含まれる)が成立・公布された。改正法は、受刑者等(在院少年等を含む)につき、被害者等(犯罪により害を受けた者およびその家族または遺族)から、被害者等の心情等(被害に関する心情、被害者等の置かれている状況または当該受刑者の生活及び行動に関する意見)を述べたい旨の申出があったときは、原則として、当該心情を聴取するものとした。また、被害者等から聴取した心情等について、受刑者に伝達を希望する旨の申出があったときは、原則として、伝達しなければならない。さらに、刑事施設の長は、矯正処遇を行うに当たって、聴取した被害者等の心情を考慮しなければならない(刑事収容施設法85 条、103 条3 項・4 項、106 条3 項、少年院法23 条の2 第2 項、24 条4 項、44 条3 項)。改正法の被害者等の聴取・伝達制度の目的は、被害者等の心情等を十分に配慮するとともに受刑者等の改善更生に資することである。改正法の意義はどこにあるのであろうか。
令和5(2023 年)年12 月1日から、刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度の運用を開始しました。本制度は、矯正職員が、これまで接する機会のあまりなかった、現に収容している受刑者または在院者(以下「受刑者等」と表現します)の事件に係る被害者や御遺族の方々に直接向き合うという新たな施策であること等を踏まえ、矯正局において、有識者から構成される検討会の開催、担当職員に対する集合研修の実施など、円滑な制度の導入に向けた各種準備を進めてきました。本稿では、矯正施設において新たに運用を開始した本制度の概要及び運用方法等について、紹介させていただきます。