私が犯罪被害の問題に取り組むようになったのは、犯罪被害者等基本法(以下、基本法)の制定以後のことであり、この分野の研究者としては「若輩」ですが、このような執筆の機会を与えていただき感謝いたします。犯罪被害者にかかわる動向を俯瞰すると、経済的支援、精神的ケアから始まり、被害者の権利獲得のための運動、そして近年は被害者のニーズを満たすための制度・施策等の推進へと大きく流れが移ってきています。そのような流れのなかで社会福祉(ソーシャルワーク)が果たす役割は大きくなっています。
2019年3月15日、県議会に上程された「三重県犯罪被害者等支援条例」(以下「条例」という。)が全会一致で可決され、翌月1日、施行されました。私は、三重県警察からの出向として、条例が採決される1週間前に現在の所属に着任し、条例制定を熱望されていた犯罪被害者ご遺族の方と採決の場に立ち会うことが、着任後の私の最初の仕事でした。
令和3年3月30日、計画期間を3年4月1日から8年3月31日までの5か年とする第4次犯罪被害者等基本計画(以下「第4次基本計画」という。)が閣議決定された。私は、令和2年8月から現職となり、第4次基本計画の策定に携わることとなったので、その策定経緯、今後の課題、具体的施策等について述べることとする。
平成16年に犯罪被害者等基本法が制定されて以降、我が国の犯罪被害者等施策は大きな進展を遂げ、地方公共団体における犯罪被害者等施策も着実に進んできたといえる。私は、平成30年4月から令和2年4月までの約2年間、法務省(東京地方検察庁)から警察庁に出向し、犯罪被害者等施策担当参事官として勤務させていただいたが、この間にも、地方公共団体において、犯罪被害者等に適切な情報提供等を行う相談窓口(総合的対応窓口)の設置が進み、平成31年4月までに市区町村を含む全ての地方公共団体に設置されたほか、全国の地方公共団体において、犯罪被害者等の支援に特化した条例を制定する動きが広がった。
私は、平成26年度、27年度の2年間にわたり検察庁から内閣府に出向した。当時、内閣府の政策統括官(共生社会担当)に犯罪被害者等施策推進室が置かれ、その担当参事官を務めることとなったのだ。犯罪被害者等施策推進室の室長には、内閣府訓令により共生社会政策担当の大臣官房審議官が充てられ、同審議官以下、参事官1名、常勤職員5名の体制がとられていた。平成26年4月当時、犯罪被害者等施策推進室は、霞が関の中央合同庁舎4号館にあったが、その年の夏、新しく整備された中央合同庁舎8号館に移転した。日常の事務を行いながらの引越し作業は、職員にとっても結構な負担であったが、新庁舎において清々しい気持ちになったことをよく覚えている。