国民の誰もが犯罪被害者等になり得る中、犯罪被害者等の声に耳を傾け、その視点に立った施策を講じ、権利利益の保護が図られる社会を実現するため、平成16年12月、犯罪被害者等基本法が制定されました。そして、同法に基づき、犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、犯罪被害者等基本計画が定められることとされております。現在、第3 次犯罪被害者等基本計画に沿って、関係府省庁の連携の下、着実に取組が進められています。警察庁におきましても、これまで犯罪被害者等基本計画等に沿って犯罪被害給付制度の見直しや犯罪被害者等に対する公費負担制度を始め様々な取組を行ってきています。 しかしながら、基本法の理念である「犯罪被害者等の個々の事情に応じた途切れのない支援」を実現するためには、国や地方公共団体といった行政の取組だけでは到底十分とはいえません。犯罪被害者等は、被害直後から、医療・福祉、住宅、雇用など生活全般にわたる支援を必要としています。そして、犯罪被害者等が被害から回復するためには、時に長い時間を要し、その間、犯罪被害者等のニーズは変化し、必要な支援の内容も変わり得ます。こうしたニーズに応えるためには、柔軟性に富んだきめ細やかな支援を被害者や地域の実情に応じて提供することができる民間の被害者支援団体の活動の充実が必要不可欠です。
私は社会教育学の専門家で、ヴィースバーデン犯罪被害者・証人支援センターでは相談員として6 年前から働いています。相談員は3 名いますが、全員が社会教育学の学位を持っています。また、トラウマ専門カウンセラー、カウンセリング技術、ゲシュタルト療法、刑事事件における調停人などの資格も取得しています。このうち2 人の勤務時間は週40 時間のフルタイムで、1 人は週30 時間です。それから総務を担当する職員が2 人おり、勤務時間は週20 時間と週9 時間です。彼女たちは電話応対やアポの管理、会計、その他の総務を行っています。施設は社団法人として登記されていますが、この社団法人はボランティアの理事3 名が率いています。
私は2015 年8 月まで裁判官として、上級地方裁判所で銀行法を専門とする民事法廷を率いていました。また、ボランティアで本日ご紹介するヴィースバーデナー・ヒルフェの理事職を24 年前から務めています。これと並行して、ドイツ国内の専業プロ職員による犯罪被害者支援組織を統括する被害者援助労働共同体(ado)の理事会メンバーでもあります。本日は時間の関係で短く、かつ要約になってしまいますが、2 つのテーマについてお話しできることを、特別な喜びと感じております。1 つはドイツにおける刑事犯罪被害者の法律で保障された権利、特に刑事訴訟手続きにおける権利です。そして2 つ目は、ドイツの犯罪被害者に対する支援サービスについてです。
犯罪被害者とその家族または遺族(以下、「犯罪被害者等」という。)に対する支援施策は、1960 年代から本格的に始まるが、イギリス(イングランド及びウェールズ)⑴は、犯罪被害者対策先進国として、今日まで目を見張る発展を遂げてきており、コモン・ウェルスの諸国だけではなく、常に世界の犯罪被害者対策をリードし、各国の対策の進展に大きな影響を与えてきた。
Weisser Ring は、ドイツで全国展開している唯一の犯罪被害者支援団体である。◦欧州全土でネットワークを持ち活動している。◦今年2016 年は創立40 周年である。◦直接支援要員としてボランティアは3,200 人、専業職員は全国に100 人いる。◦公的支援を一切受けず、寄附、会費で賄い、財源は合計1,700 万ユーロである。◦寄附以外にも、約5 万人からの会費、罰金からの割り当て金、遺言による遺贈等がある。◦研修、ロビー活動、国際的・国内ネットワーク作りに予算を割り当てている。◦公的支援は受けていないので独立した立場でロビー活動を行うことができる。◦国内に420 ヵ所の地方支部があり、活動は、直接各種当局への同行付添い、金銭的援助等様々な分野に及ぶ。