本年令和3(2021)年は、犯罪被害者等給付金支給制度が施行されてから40年、また、民間の被害者支援が具体化される大きなきっかけとなった「犯給制度発足10周年記念シンポジウム」開催から30年という節目の年に当たる。この機会に、私の目から見た被害者支援の進展を、被害者の法的地位の向上、中でも、刑事手続における被害者の参加の拡充という視点から若干の感想を述べさせていただきたい。
平成30年3月、犯罪被害給付制度が改正された。この改正は、犯罪により親を亡くした遺児、犯罪被害により長期療養に苦しむ方、事実上親族関係が破綻した者から被害を受けた方などに対する支援を拡充するとともに、それまでほとんど活用されなかった仮給付金制度の柔軟な運用を可能とするものであった。令和元年度には拡充後の給付が18件、仮給付金制度も10件適用されている。全国の担当者が改正の趣旨に沿って日々給付事務に当たってくださっていることに心から敬意を表する次第である。
平成23年8月から平成26年8月までの間、警察庁犯罪被害者支援室長として勤務したことから、当時、携わった犯罪被害者支援要綱の運用や犯罪被害給付制度改正について振り返りたい。
2021年は、犯罪被害給付制度および犯罪被害救援基金発足から40年、民間の犯罪被害者支援活動開始から30年という節目の年に当たるという。想えば長い年月を閲したものである。この間、被害者(その家族・遺族を含む。)を支援するための諸施策は、公的ベースでも民間ベースでも、また、経済支援から精神支援に至るまで様々な面で、格段の進化を遂げてきた。現在推進されている被害者支援のための諸施策を見ると、その充実ぶりは、40年前ないし30年前の時代と比べて、まさに隔世の感がある。この間、使命感と情熱をもって、諸施策を牽引してこられた関係各位のご尽瘁に心から敬意を表する次第である。
今年、2021年(令和3年)は、犯罪被害給付制度が施行されてから40年、民間の被害者支援が始まるきっかけとなった犯給制度発足10周年記念シンポジウムから数えて30年という節目の年に当たる。日本被害者学会も1990年の設立であるから、昨年、創立30周年を迎えている。この間、全国に民間の被害者支援センターが整備され、犯罪被害者に対する相談や直接支援事業が着実に実績を積み上げてきている。また、実現した被害者支援制度も多岐に亘る。被害者への情報提供という面では警察の被害者連絡制度や検察庁の被害者等通知制度により刑事手続の進捗状況等についての情報が通知されるようになり、消極論も根強かった刑や処分の執行状況に関する情報提供も実現している。被害者が捜査の過程で負担を被ることがないよう様々な配慮がなされるようになり、遮へい措置やビデオリンク証言、被害者等の特定事項の秘匿など公判での二次被害を予防するための各種制度も設けられるに至った。また、被害者の手続関与については、被疑者・被告人の人権保障の観点から反対論も唱えられたが、被害者が公判で意見陳述を行い、或いは少年審判の過程で意見聴取を受ける制度が導入され、ついには一定の範囲で被害者が公判に関与する被害者参加制度も実現し、概ね良好に運用されている。こうした各種制度の実現には、2004年に制定された犯罪被害者等基本法とそれに基づく犯罪被害者等基本計画の策定が大きく寄与したことも忘れてはならない。