これまでに数多くの都民センター利用者が、有効なPTSD 治療の恩恵を受け、犯罪被害による精神的後遺症からの回復の道をたどることができました。その実績から、当初は2名の心理専門職で取り組んでいたPE 療法を、現在の都民センターでは7名の心理専門職が実施しています。そのうち4名は同療法のスーパーバイザーとしての指導者資格も有しています。さらにコロナ禍の下では、ウェブを利用したオンライン形式での同療法の提供も積極的に活用しています。
ここまで数々の困難を乗り越えて活動を続けてこられた方々の持続力に敬意を表したいと思います。現在では警察と連携した支援の方式、例えば被害者への早期支援の在り方や、裁判の支援など、様々な支援活動が、安定した活動として位置付けられており、犯罪被害者支援に大きな役割を果たしています。大学の授業などで、被害者支援の活動があって当然だと考えている若い人を見ると、この30年の変化に驚かされます。
犯罪被害者やその遺族を対象として、物質的援助や相談・情報提供、刑事手続における権利擁護などと合わせて、危機介入モデルによる精神援助が提供されるようになったのは、欧米先進国ではおおむね1970年代からであり、その活動の多くを担ってきたのは、現在も活発に活動を続けているさまざまな非営利民間援助団体である。当事者を含む草の根運動から始まったそれらの団体は、活動を発展させる中で、組織的に訓練育成されたボランティア・スタッフが精神援助を提供してきた。
犯罪被害者支援との出会いから振り返り、犯罪被害者のメンタルヘルスの課題や心理的支援のあり方、精神科医療と支援団体との連携について。
急性期のトラウマ反応だけでなく、性犯罪被害者のほとんどに、長期の精神健康に悪影響をもたらす爪痕のような否定的認知が存在しています。羞恥心に加えて、なぜ被害を防げなかったのか、自分にも落ち度があったのではないかという無力感と自責感、自分はもう汚れてしまったという汚れ感など、自分自身への見方が否定的になると、自尊感情は低下し、自分に自信がもてず、対人関係にも支障が出てしまいます。