私は、この後、少しお話をさせていただきますけれども、精神科医として、それから、児童青年期の精神科医として、日ごろ臨床に携わっております。その臨床の場で、犯罪被害に遭われたお子さんや、そのご家族と出会うことも多々あります。そういった方々から様々なことをお教えいただいておりまして、本日は、そういったことも含めて皆さん方と共有させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
私は児童青年期の精神科医として臨床に携わっており、犯罪被害に遭ったお子さんやご家族と出会います。勤めている兵庫県こころのケアセンターは阪神・淡路大震災後の心のケアをする組織で、付属の診療所ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)に特化したTF- CBTという治療プログラムを提供しています。
TIC を考える上でまず共有したいことは、TIC は、決 して目新しい概念や技術的な一技法ではないというこ とである。TSC(Trauma Specific Care:トラウマ スペシフィックなケア)と呼ばれる、トラウマに特化した PTSD(心的外傷後ストレス障害)への治療プログラム (認知処理療法,EMDR,持続エクスポージャー療法, トラウマ焦点化認知行動療法など)よりももっと対象は 広く、様々な人々がもっておくべき視点の一つとなる
犯罪被害者支援との出会いから振り返り、犯罪被害者のメンタルヘルスの課題と、その心理的支援のあり方。そして、犯罪被害者等施策との関連についての推進、現状の精神科医療と支援団体等の連携について、お話をさせていただきたいと思います。
犯罪被害者支援の歴史と犯罪被害者の遺族の活動は深い関わりがある。犯罪被害給付制度以前、公的な犯罪被害者支援がない現状に対して、1967年に息子さんを殺人で失ったご遺族である市瀬朝一氏が「犯罪による被害者補償制度を促進する会」を立ち上げたことが最初の草の根の活動であったとされている。その後三菱重工爆破事件(1974年)を契機に1980年に犯罪被害者給付制度が設立されるが、残念ながら市瀬氏はその制度の設立を見ることはできなかった。犯罪被害給付制度は国による最初の被害者への経済的支援であったが、この時点では被害者のメンタルヘルスのケアはまだ支援の対象とされていなかった。