残された者の使命
公益社団法人被害者支援センターとちぎ
自助グループ「あかし」
M・S
「犯罪被害者の声 第16集」より
「助けてあげられなくて、ごめんね」
2015年1月26日 息子は、可愛がっていた中学生と自宅でトラブルになった。その当時、足首を骨折して松葉杖をついていたが、その松葉杖がくの字に曲がるほど一方的に激しく殴られ全身打撲による失血死で16歳の命を奪われた。中学生は通報もせずその場から逃げたが、その後、逮捕され家庭裁判所から「傷害致死罪」で初等少年院に送致された。
こんなに辛いことが起こるとは、思わなかった。
当たり前のように、息子の成長していく姿を見続けていけると思っていた。
あれから何年の月日が流れても、どうして息子がいないんだろうって、毎日思う。
「誰にも言えなかった。味方がいて良かった。」って、亡くなる前の日に言ったよね。
今でも、あの言葉が忘れられない。
助けてあげられなくて、ごめんね。
声が聞きたい。話がしたい。顔が見たい。
どんなに経っても、息子のいない日々に慣れることができない。
「風化させない努力」
息子と会えなくなって、早いものでもうすぐ丸7年がたちます。
月並みな言葉ですが、長かったような、短かったような・・・・。
あれから私自身は、息子のために何ができたのだろうか?
そしてこれから何ができるだろうか・・・・。
今までは、現実を受け入れ受け止めることだけに精一杯で、先の事を考える余裕など全くなく、ただ一日一日が過ぎて行ったように思います。
加害少年は、この月日の中で成人し、もう加害少年と呼ばれる歳でなくなりました。
それも「生きていればこそ」です。
息子は、あの時の16歳のまま・・・・。
息子が生きていれば・・・・。
成長を楽しみにしていた私は、あの時から時が止まってしまいました。かけがえのない大切な息子を殺される・・・・。
こんな辛い思いをするとは、思ってもみませんでした。
時が経って思うこと。
少年事件ということで、あまり報道されることがなかったこの事件。知らない方もいると思います。
一人でも多くの方にこの事件を知っていただき、命の大切さ、命の重さ、命の尊さ、今の幸せな日常が「あたりまえ」でないことを改めて考えていただきたいと切に願います。
私の息子として、息子が生きていた命の証。
息子の母親として、事件を風化させたくない。
息子の存在を無かったことにはしたくない。
同じような事件が起こることのない世の中になって欲しいと思います。
事件後、警察の方から「被害者支援センターとちぎ」を紹介してもらいました。
被害者支援センターとちぎの方々は、とても優しく私の話を聴いてくれました。
月1回行われている、自助グループ「あかしの会」に参加させていただいています。
私と同じように、大切な人を犯罪被害によって奪われた方々と話をして、同じ思いを持つ方々の優しさや励ましの言葉に救われました。
息子のために、私ができること・・・・。
この思いから、被害者支援センターとちぎの取り組みの一環で事件の風化や同様の事件の防止を目的としているパネルを作製しました。
パネル作製時「被害者支援センターとちぎ」並びに「あかしの会」のご協力で無事完成することができました。
先に掲載させて頂いた手記を書いてみないかとお誘いも頂き、今の自分の気持ち、もう届けようのない息子への思いを文字にさせて頂きながら、私自身とても助けられ「被害者支援センターとちぎ」や「あかしの会」の方々には、本当に感謝しております。