犯罪被害者に寄り添い支える 公益社団法人 全国被害者支援ネットワーク

全国被害者支援ネットワークは、全国48の加盟団体と連携・協力しながら
犯罪被害に遭われた方々へ支援活動を行なっています。

犯罪被害者の声 一生続く犯罪被害者の苦しみ

一生続く犯罪被害者の苦しみ

公益社団法人被害者支援センターとちぎ
あかしの会
K・K
「犯罪被害者の声第9集より」

2001年10月31日、市の職員だった夫は夕方職場を退庁後、行方が分からなくなってしまいました。職場から200m~300m程の田んぼの中に自転車やカバン、書類等が散乱していましたが夫の姿はどこにもありませんでした。
そのために警察が事件にまきこまれたと判断するまでに時間を要し、決して犯罪被害者ではありませんでした。行方不明になってから約1年3ヶ月後、元暴力団関係者ら4人が逮捕され実行犯3人は殺害を認めましたが殺害を依頼した主犯の廃棄物処理運搬業者は逮捕前に自殺してしまいました。悔しいです。

明らかになったのは主犯の業者の不正なごみ処理問題が発覚し、その不当要求をはねつけていた夫が逆うらみされ拉致殺害されたということです。遺体はまだみつかっていません。

時間の経過と共に、時には笑い、夫のことを忘れている時もあります。当時は生きて行く力さえ無くしていたので歳月が少しずつ穏やかな心を取り戻しつつあるのかもしれません。周囲のもの珍しそうな視線もだいぶ減り、買い物も身構えたりおどおどせず少し余裕が出てきていて、ほっとしているところです。

でも、何か変です。時が過ぎても納得できない部分が多くあります。
・最期を看取っていないからかも
・別れの言葉を言えなかったからかも
・31年連れ添ってくれたお礼を言えなかったからかも
時々申し訳なくて詫びています。そして夫を守れなかった自分を責めています。
しかも犯人たちは遺体の遺棄場所をはっきり明かしませんでした。
刑事裁判で「遺体がみつからないのは警察が悪い」と嘯うそぶいていた被告もいました。夫は地方公務員として厳正に職務をこなしていただけです。殺害の実行犯はお金さえ手に入れば標的は誰でも良かったのでしょう。死人に口無しの裁判ではお互い罪のなすり合いを続け醜い法廷での競いを見せつけられてしまいました。つらい、悲しい思いだけが残った37回の法廷でした。

私は現在、刑務所の矯正教育に関わらせてもらっています。
「つらいかもしれないが自分のやった行為にきちんと向き合って下さい。逃げないで下さい。自分の過ちは自分で責任をとるしかないのですよ」と話しています。頷いたり涙を浮かべる受刑者もいます。私の言葉がどこまで届いたのかは分かりませんが、一瞬でも感じるものがあったのかもしれません。

ただ、本当は伝えたい相手が違います。夫を殺めた受刑者たちに伝えたいのです。刑事裁判で感じた彼らは人の仮面を被った獣にすぎず、人としての心は持っていませんでした。
・突然夫の行方が分からなくなった胸騒ぎ
・一体何が起きたのか分からなかったこと
・残された家族が次々と心身のバランスを崩し元に戻れないこと
・殺害されたことへの怒り、憎しみ、悲しみ、悔しさ
・そして夫をどこに遺棄したのか
伝えたいこと、問いかけたいことが沢山あります。でも今まで傷を負い続けているのでアクションを起こす勇気はありません。
顔も思い出したくない、名前も忘れてしまいたい受刑者たちです。

夫の事件では5人いた加害者のうち3人が自殺や獄中死をしています。今は2人の受刑者しか生存していません。
そこで、少し私の気持が揺らぎ始めました。残された2人の受刑者が出所するまで、きちんと見届けたいと思うようになり、検察庁の被害者等通知制度を利用したいと考えるようになりました。
手続きのため被害者支援センターとちぎに間に入っていただき、地検にもスムーズに繋がり、届けを出すことができました。しかもすぐに最初の通知が私の元に届きました。受刑中の刑務所名、処遇状況等が報告されています。
予想に違わず刑務所内でも良好な受刑者ではないようです。今後6ヶ月ごとに報告が届きます。それと共に再犯防止のために受刑者の釈放時期の通知を受ける手続きもしました。これらは夫の刑事裁判が終えた時には手続きできるものではありませんでした。
たまたま、長く被害者支援センターと関わらせていただいているので新しい通知制度があることも分かったわけです。

被害者支援は被害に遭った時から刑事裁判を終えるまでの一時期だけ支援していただくものではありません。犯罪に遭った当初と数年経った時では悩みや疑問、考え方にも変化が生じることもあるでしょう。それに応じてずっと途切れのない支援が必要になります。これができるのが被害者支援センターの特色だと思います。
私は悲しい時、泣いたり、怒ったり、愚痴をこぼしたり、また必要な支援をお願いしたりと、一番支援センターに支援を受けている被害者のひとりです。私にとって支援センターは安心、安全な場所になっていますし、居心地の良い落ち着ける場所でもあります。

これからも、スタッフやボランティア相談員の方々に感謝をしながら、センターでの支援や広報活動等に皆さんと一緒に携わりたいと思います。
だんだん困難になりつつある夫の帰宅を待ち続けながら、やめたくてもやめられない犯罪被害者という重荷を背負って生きて行きます。
なんとも重い宿命です。