犯罪被害者に寄り添い支える 公益社団法人 全国被害者支援ネットワーク

全国被害者支援ネットワークは、全国48の加盟団体と連携・協力しながら
犯罪被害に遭われた方々へ支援活動を行なっています。

犯罪被害者の声 孤独(『いつもそばにいるよ』原詩)

孤独(『いつもそばにいるよ』原詩)

認定NPO法人大阪被害者支援アドボカシーセンター
自助グループ「ippo」
J・S
   「犯罪被害者の声 第15集」より

何事がおこったのか
果たして本当に自分の身に降りかかったことなのか
思考がとまってしまう
あなたの死を受け止めきれずにいた

なんで体にこんな傷が
なんてひどいことを
胸が潰れそうな気分だった
痛かったね
苦しかったね
無念だったね
髪を撫でた時の
ぞっとするぐらいの冷たさが
今も私の左手に残っている
その人の髪の固さは
まぎれもなくあなたの髪だった

泣いてはいけないと思っていた
冷静に対応しなければならないと思っていた
そんな数日を過ごした後
あなたと斎場にいた

もう一度お別れができると思っていた
しかしそんな余裕もなかった
後悔しても遅すぎた
急ぐようにあなたは天に昇っていった
だから大声をあげて泣いた
真っ黒な煙が灰色になり
やがて蒸気に変わるまで

煙をかき集めて抱きしめたかった
それが出来なくて悲しくて仕方なかった
娘として、 人間として
最後を看取ることもできなかった
その機会が奪われてしまったことが悔しくてたまらない
本当にごめんなさい

ゆっくりと涙がひいたあとに
やってきた警察官に待合室で事情を聞かれた
父の兄弟について、 同じことを何回も聞かれ繰り返す
私は疑われているのだと感じた
やるせなさとともに怒りが湧いた

軽く小さくなった父を抱いているのに
お寺の外に警察が待ち構えていた
参列者ひとりひとりの名前を確認する
もうやめて
静かにして

殺されて亡くなることは恥なのか
メディアに扱われることは恥なのか
息をひそめるように過ごしていた
新緑の心地よい季節に
初夏のさわやかな季節に
衣替えさえも忘れていた
父は命を奪われ、私は心が壊れた

「じやあまたね」なんて
別れ際にかける言葉は
明日を信じるこその言葉で
明日って何かが起きれば
突然なくなることもある

「約束する」なんて
次につながる言葉は
未来を信じるこその言葉で
未来ってガラスのように
壊れてしまうこともある

悲しみがとても重すぎて
でも「気持ちはわかるよ」なんて言葉で
簡単に言われたくなかった
でも孤独に押し潰されそうで
誰かにそばにいてほしかった

涙が止まらなくて
でも「泣かないで」なんて言葉を
簡単に言われたくなかった
でもずっと泣いているとき
誰かに一緒に泣いてほしかった

星座をかたどる星のひとつが
手が届かなくなった大切な思い出に見えて
胸は痛み、 涙が流れるけど
あなたを忘れてしまいたくはなかった

夜明け前の暗闇のような今を過ごしながら
誰かにわかってほしかった
傍にいてほしかった
自分が眠りに落ちるまで
そして次の朝がきたら
おはようと声をかけてほしかった

そしてそれを繰り返してほしかった
一人ではないとわかるまで