大切な日常
公益社団法人秋田被害者支援センター
自助グループ 秋田交通死亡事故被害者の会
Y・U H・U
「犯罪被害者の声 第17集」より
いつも通り交わした言葉。
「じゃあね、気をつけてね」息子は「うん!」と笑った。
これが私との最後の言葉になるなんて思いもしませんでした。翌日には「ただいま!」とドアを開けて帰って来て「お帰り」といつも通り交わすはずだった言葉。
いつも通りって何だろう。なんでいつも通りじゃないの。
夜遅く家にかかってきた電話。
何か嫌な予感がして、私は二階から駆け降り主人が誰かと話しているのを横で聞いていて、事故の知らせだと知った。
この知らせのほんの数十分前に、主人は息子と電話で話をしていました。これが主人にとって息子との最後の会話になるなんて思いもせずに。電話を切った約十分後に事故に遭いました。
平成23年8月12日22時16分頃、国道13号線で、軽自動車がセンターラインを越えて対向して来た大型10トントラックと正面衝突をしました。
友達が運転する軽自動車の助手席に、息子が乗っていて事故に遭いました。事故の原因は、運転していた友達の居眠り運転とみられました。
息子は、大学病院に運ばれて懸命な治療を受けましたが、3日後には脳死、9日後に息を引き取りました。大学2年生の夏、19歳11か月、私たちの長男です。
たった一つの不注意で、息子の大切な命、そして息子に関わる人の未来までも変えてしまいました。
いつも通りの朝は、もう2度と訪れません。
「おはよう」の声が聞こえない。
呼んでも返事が返ってこない。
息子が使っていたお茶碗や箸、部屋にある物全てそのままで何も変わっていないのに、それを使う息子がいない。
11年間続けてきた大好きなサッカー。
ユニフォーム、サッカーシューズ、ボール、使う人を待っているかのよう。
出来る事なら、ボールを追いかける息子をもう一度見たい。応援したい。
どうしてもそれが叶わないのか、どうしてここに息子がいないのか、いまだに整理がつかないままです。
19年間、ずっと一緒にいたのに、これから先もずっといるはずだったのに。突然、家族を失うという事は、想像を絶することです。
想像できますか。昨日まで元気で一緒に笑っていた家族の一人が、突然命を奪われる事を。きっと想像する事は、出来ないと思います。自分の家族にそんな事が起こるなんて考えもしないから。私たち家族もそうでした。
でも、被害者遺族になってしまって言える事があります。交通事故は、誰にでも起こり得る事なのです。今、こうして生きていられる事、本当は奇跡なのかもしれません。
息子と過ごした日々を想い、悲しみを背負い、息子の分も一日一日を大切に過ごしていきたいと思います。
楽しかった日々をありがとう。
私たちの子供に生まれてきてくれてありがとう。
これからもそれぞれの胸の中で、ずっと一緒に生き続けてるよ。
※秋田被害者支援センター発行の手記集「犯罪被害者等の手記第4集」掲載の手記を転載いただきました。