突然、息子を奪われて

(公)被害者支援都民センター

成 宮 和 子

 平成16年5月31日、10トントラックの運転手が急激な左旋回による左折の際、サイドミラーによる後方確認を怠ったため、大学へ向かうため原付バイクに乗っていた息子はトラックの前輪に巻き込まれ、即死しました。
 考えてもみなかった息子の死。自責の念にばかりかられ、加害者への憎しみより喪失感の方がはるかに強く、人生の敗者のレッテルを貼られたような気持ちになりました。「いったい息子は何のためにこの世に生を受け、今日までがんばって生きてきたのか。」
 センターの初めての面談で、私のように突然犯罪被害者遺族になった者は、自分を責め、加害者に対する怒りより、かけがえのない家族を失った悲しみの方が強いのは当たり前だと教えられ、受け止めてもらえたとき、事故直後は特に麻痺した感情が出てくるんだと驚いたと同時に、私だけがおかしいのではないと強く思いました。  裁判が始まっていく中、ある相談機関で「この事件は原因がはっきりしていて裁判がやりやすくおもしろい。」と言った弁護士の言葉は、遺族の気持ちを全く無視したもので、私の受けた二次被害の中で、特に強烈なものでした。このようなことも全てセンターで話すことができ、少し心が落ちつけたのは救いでした。
 私はたまたま被害者支援を受け、裁判に立ち向かっていけるようになりましたが、突然遺族となり、混乱状態の中、時間だけが経っている人が多いのではと危惧します。被害者側に立って応援、はげましてくれた「都民センター」のような支援が、全国どの場所にいても同レベルで受けられるようになってほしいと思います。
 また、事故から時間が経つにつれ、心の回復よりも、毎日かたときも離れないむなしさとの付き合いに疲れてしまい、それが歪みとなって、身近な人間同士ささいな事で傷つけ合うことも起こってしまいます。そのような愚かな現実の出来事も真摯に受けとめ、サポートして共感してもらえるセンターは私にとって必要不可欠のものです。
 「笑顔がもどるまで」の支援は決して短期間で片付くものではなく、長い時間をかけて、少しずつ痛みを分かち合いながら、被害者自身の力で獲得していくものなのではないかと感じるようになってきました。