守る

201404cardぎふ犯罪被害者支援センター

匿   名

 

 私の娘は同じ犯人に何度も強姦されました。私は苦しむ娘を早く助けてあげることができませんでした。今でも後悔の毎日です。
いつしか娘は口数が減り思いつめた表情が見られる様になりました。
 「おかしい」と思い「何かあったの?」と聞いても何もないと言うばかり。何ヶ月か過ぎても娘に笑顔は戻ってきません。何かあると確信し話してくれるまでと思い娘に聞きました。しかし何もないとしか言いません。それでも「お願いだからウソはつかないで、絶対守るから」と話しつづけやっと口を開いてくれました。事実は私の想像をこえるものでした。とても悪質で卑劣な行為を娘はくり返しうけていました。
 地獄の様な日々を耐えてきたのです。犯人は何も知らない純粋な娘を抵抗できない様に脅し何度も強姦してきました。娘は怯えながらも精一杯に嫌だと言っていました。それなのに怖がる娘に強姦したのです。
 そのうえ写真まで撮っていたのです。未成年の娘はどれだけ怖く苦しかったか・・・
 でも娘は自分が話せば周りは大変な事になる、迷惑をかけてしまう。お父さん、お母さんが悲しむ、苦しむ姿を見たくない、自分が我慢すればいい、そんな思いで地獄の様な日々に耐えてきたのです。私たちや周りを傷つけたくない一心で何も話さなかったのです。
本当は「助けて 怖いよ 苦しいよ」と言いたかったはずなのに。
 本当の事を親にも言えずに苦しんで。私はこんな娘の気持ちを考えると苦しくて心が張り裂ける思いです。
 今でも娘は大人の人と話したがりません。不安でいっぱいなのです。私たちも娘も不安でたまりません。嫌な噂がたつんじゃないか、その噂でイジメられないか、もしかして自殺してしまうんじゃないか、心配でたまらない毎日です。
 そして主人はこの事件がおきてからうろたえて泣いてばかりの私とは違い一生懸命娘、家族を守ろうと涙も見せずに気丈にふるまっていました。私が「大丈夫?」と聞いてもいつも「オレは大丈夫」と安心させてくれました。ほんとうは辛く悲しく悔しいはずなのに。しかしある日主人が初めて泣きました。犯行がくり返されている間、どれだけ苦しくつらい思い、恐怖を胸にしまい込んでいたか。娘の心を考えると自然に涙が出てきたこと。大事な家族を守らなければいけない立場なのに泣いてしまったと。また娘との会話の中で主人が「あの人いい人だな」と言うと娘は「うん、でも人間本当は何を考えているか分からんし」と言ったそうです。こんな事を言う子じゃなかった。素直で思いやりがある子なのにこんなふうに考える様になってしまったとずっと泣きつづけていました。
 私が娘の異変に気づきながらも今まで救ってやれませんでした。
 もっと早くよく話を聞いていれば、ここまで悪質な行為までされなかった。第一に娘は母親の私を傷つけまいと事実を言わなかったのです。自分は傷つき苦しんでいるのに。日頃から苦しみを打ち明けられない程、弱い母親だったのです。大切な娘が苦しんでいるのだから、早く気付いてあげられなかったのだから私はもっと苦しまなければいけない。本当はご飯も食べちゃいけない、笑うなんてとんでもないと思います。またもっと事件の事実を知らなければと思う反面、知るのが怖くて、知りたくない、本当は忘れたいと思ってしまう自分が許せません。早く気づいてやれなかった、助けてやれなかった、これは私の罪です。大きな罪を犯してしまいました一生背負っていきます。
 そして犯行がくり返されている時の事を娘は勇気を出して話してくれました。娘は「本当は外へ出たくなかった。ご飯も食べたくなかった。
 誰とも話したくなかった。」と言いました。とても深い重い言葉です。
 今は「私は他の人と違う、邪魔にならない様にしなくちゃ、こんな暗い性格になっちゃったし。」と言っています。どうして何一つ落ち度のない娘がこんなに自分を責めなくてはいけないのでしょうか。娘はこの先どうなってしまうのでしょう。ひきこもってしまうのでしょうか?いつか事件を忘れ立ち直れる日がくるのでしょうか。ちゃんと好きな人と結婚し、子供を授かり、幸せに暮らせるのでしょうか。どんな事があっても私たちは娘を守ります。娘は一生消えることのない、いろんな傷を負いました。私たちは犯人を絶対に許すことができません。犯人に言いたいです。「娘は何も知らない純粋な子でした。娘を元にもどしてください。できないなら一生刑務所から出てこないで下さい。一生をかけて罪を償って下さい」と。
 私たちは警察に通報しました。警察の方は娘に親切な配慮をして下さいました。私の話を聞いて下さった警察の方も動揺している私に、心が落ち着く言葉をかけて下さいました。どれだけ心強かったか。心から感謝しています。そして何より救われたのは支援センターを紹介してくださった事です。支援センターの方は、私たちを支えて下さいました。夜遅くまで事情聴取が終わるまで一緒に待って下さったり、とても嫌な検査にも一緒に寄り添って頂きました。世間は「本当は女から誘ったんじゃないか」などという心ない言葉が聞こえてきました。支援センターの方は私たちの話を聞いてくれました。全て共感して下さいました。これからどうしたらいいのか、どうなっていくのか、パニックの私たちに色々相談にのって下さいました。不安や心配があると一緒に寄り添い行動し解決して頂けました。
 支援センターの方がある人に「被害者や家族は今までもつらかっ
たけど、これからもずっと辛いんです、忘れる事はできないんです。」と言って下さいました。本当に支援センターの方たちは私たちの事を分かってくださるんだと涙があふれて止まりませんでした。今の私たちがいるのは、ここまでやってこれたのは支援センターの方たち、警察の方たちのおかげです。私たち家族を支えて頂きありがとうございました。
 私たちは今も不安と恐怖でいっぱいの毎日を送っています。犯人が出てきて逆恨みされ、私たち家族を襲いにくるんじゃないか。娘をまた脅したりしないか、ストーカーになるんじゃないか。と、この不安と恐怖は一生続きます。
 犯人が出てきたら、居場所も分からず怯えて暮らしていかなくてはならない。被害者である私たちが・・・
 復讐の防止かと思いますが、被害者は犯人が出所した後、行動や居場所も知らされず、怯えて暮らさなくてはいけないという、こんな国の現実はおかしいと思います。
 犯罪をおかしても、刑務所に入れば再犯はおかさないのでしょうか?被害者は安心して暮らす事はできないのでしょうか?
 また娘は犯行をくり返されている事を大人に SOS のサインを出していました。それでも私を含め大人は気づいてあげる事ができませんでした。もっと子供の声に耳を傾けなければいけないと思います。
 最後に被害にあわれた方、少しでも私に辛い気持ちを分けて下さい。少しでもあなたの力になりたいです。